先生をばかにする子どもたち

 子どもというのは、今も昔も、純粋であるが残酷である。自立できず、大人から押さえつけられているため、大人への甘えと反発が同居している。怒るときに使う「コラッ」という言葉も「子等(こら)」から来たのだろう、子どもは常にいたずら好きで、反逆精神にあふれ、大人から怒られ続けてきた。
 初めて一緒に工作をする子どもたちでも、先生が毅然としていないと、先生の名前を呼び捨てにしたり、おちょくったり、バカにしたりする子どもがでてくる。特に、弱い立場の女の先生に対しては容赦ない。子どもがそういう態度を、あからさまとるのは、親のいないときだけだ。親が迎えに来るといい子に豹変する。特定のタレントをおとしめてお笑いの種にするテレビ番組の影響もあるかもしれないが、子どもが大人に反逆するのは昔も今も変わらない子どもの習性だと思う。
 わたしの工作教室では、そうしたことはないようにしている。ひとつには、私は子どもたちの技能を信じており、カッターも、キリもノコギリも使わせる。そのため、先生の言うことを守らないと大きなケガをする。親密さを表してくれる冗談は歓迎だが、先生の言うことを聞き、言われたことを守ることが、教室での決まりとなっている。ほんとうにあぶないと思えばきつく叱る。
 もうひとつは、子どもたちとの信頼関係だ。大人・子どもは関係なく、工作の好きな人間同士が、工作というテーマで向き合うことの素晴らしさを伝えたいと思っている。子どもたちは工作をするたびに「ここは自分で工夫したよ。すごいでしょ」と内心得意気に思っている。わたしはできる限り、それに気づき、ほめてあげたいと思っている。また、子どもが自分で解決できない問題にヒントを与えたり、解決することで「さすが、先生は すごい」と思ってもらえるように努力している。そうしたことの積み重ねこそが、お互いを認め合い、尊重しあう関係へとつながる。教室でのそうしたポジティブな緊張感がなければ、ほんとうの工作はできない。それは、スポーツクラブと共通する雰囲気かもしれない。スポーツで試合に勝ちたいという想いは、教室でいい物を作りたいという気持ちと同じだ。教室に、そうした雰囲気があふれていると、新しく入ってきた子どもたちも、自然と先生との関係を深め、成長できるようになる。
 「子どもは、自分を成長(向上)させてくれる大人を自ら選ぶ」という言葉がある。本当に、そのとおりだと思う。

< 先生の説明を真剣に聞く子どもたち>